決戦!#腹筋女子、笑わない男に再び会う?
時間が盗まれた!
カフェの隣の席で、くるくるパーマの女がアイスカフェラテをチュウチュウ飲み続けている。
小さい口にストローをくわえ、飲み切ることなく飲み続けている。
ちらっと振り返ると、カウンターで店員2人が不気味な笑みを浮かべて突っ立っている。
ムダ話もせず、ピクリとも動かず、ただ突っ立っている。
窓の外にバスターミナルが見えるんだけど、人が行き来している。
正確にいうと、同じ人物が行ったり来たりしている。
どういうことか・・・
時間を盗んだのは誰?
分かってる。私の記憶の中の笑わない男。
私たちは以前付き合っていた。
どうして笑わない男なんかと付き合っていたかというと、その笑わない男がダルビッシュにそっくりだったから。
それ以外に理由はない。ダルビッシュに似てたから。
でも笑わないダルビッシュというのはホントにダメダメだった。
人は少しは笑ったほうがいい。できれば笑い合えたほうがいい。
一方的に笑わないのはダメ。つまらない。卑怯。ガンコ。無。
彼に一度でいいから言ってやりたかった。
「自分が全然笑わないの自覚してる?」
このことばはすぐに破綻をもたらしただろう。
私は言わなかった。
それが別れて2年経って、今さら言ってやりたくなった。
だって今も、絶対、100%、笑ってないから。
彼のことを思い出すとイライラの波が押し寄せて、つい時間を忘れてしまう。
楽しいことをして時間を忘れてしまうのとは逆に、これはカラダにすごく悪い。
私の左の指先がわずかに痙攣し出した。
最悪救急車で運ばれるかもしれない。
大丈夫。運ばれるのはリハーサル済み。
笑わない男とはまったく別件で私の神経は異常をきたしたことがある。
なんてことはない。おとなしく運ばれればいいだけ。
私は暴れたりしない。泣いたりしない。ただぷるぷる震えているだけ。
ああダメ。もうダメ。
笑わない男にひとこと言ってやりたい。
「なぜ?なにゆえにお主は笑わぬのじゃ!」
LINEは消しちゃったし、電話番号も消しちゃったし、会う手立てはない。
職場と家を知っているけど、直接会って言ってやりたいわけじゃない。
やつのアパートの玄関に「お前は笑わない男だ!」と張り紙したいレベル。
直に攻撃はしない。ああでもそんなことしたら同じアパートに住んでる人に迷惑だよね。
じゃあ、「Smile!」ってのはどう?
これならアパートの住人も嫌な気持ちにはならないでしょうに。
ちょっと不思議な気持ちにはなるとは思うけど。
とにかくこの3分間、いや30分間、いや3時間、私は笑わない男のことを考えて、カフェで髪が10本抜けた。
【END】
※あとがき
ちょっと思い出したので書いてみました、ダルビッシュシリーズ。
別のブログで書いていたものですが、こっちにはみ出した感じです。
笑わない男に再び会うことがあったら、まず私の腹筋を見せてやりたいです。
いきなり笑うかもしれません!